「永井荷風_破蓮」

永井永光,水野恵美子,坂本真典『永井荷風 ひとり暮らしの贅沢』新潮社
「破れた蓮の葉はひからびた茎の上にゆらゆらと動く。長い茎は動く葉の重さに堪へず已に真中から折れてしまつたのも沢山ある。揺れては触合ふ破蓮(やれはす)の間からは、殆んど聞き取れぬ程低く弱い、然し云はれぬ情趣を含んだ響が伝へられる。」(92頁)

荷風が見て取った、蕭条たる景色の美である。
以下、孫引きです。
「余韻が縹渺と存するから含蓄の趣を百世の後に伝ふるのであらう」(漱石『草枕』)