南方熊楠「神社合祀に反対し投獄される」
中村紀(作家)「未来の人、熊楠」
松居竜五,ワタリウム美術館 [編]『クマグスの森ー 南方熊楠の見た宇宙』(とんぼの本)新潮社
熊楠は、ふんどし一枚で大楠の前に立ちはだかり、伐採を止めようとした。さらに、(神社)合祀反対の声を記した原稿を新聞社などに送り続けた。運動中に投獄されたが決して諦めなかった。その間読書に励み、獄中で珍しい粘菌を見つけたりし、釈放の日も「ここは静かだし涼しいからもう少し置いてくれ」などと言って平然としていたという。そして、一地方の運動だけではどうにもならないと、民俗学会の権威、柳田國男など中央の学者たちに働きかけた。柳田は国会へ『南方二書』という合祀批判文書を持ち込み、熊楠の思いは全国的に知られることとなった。熊楠の何者にも屈しない情熱のおかげで、大正七年には神社合祀は廃止された。
人と自然とは常に連携している。熊楠は、粘菌の研究者として有名であるが、ただ地べたを這いつくばって菌類ばかりを見つめていたわけではない。目に見えない菌でさえ、われわれ人類が暮らす地球、さらには宇宙という大きな世界の重要な役割を担っているという考えが、彼の脳裏には常にあったのだろう。今になって粘菌が健康のために注目され出しているが、この時代、そこに目を向けた人が他にいただろうか。(102-103頁)
人と自然とは常に連携している。熊楠は、粘菌の研究者として有名であるが、ただ地べたを這いつくばって菌類ばかりを見つめていたわけではない。目に見えない菌でさえ、われわれ人類が暮らす地球、さらには宇宙という大きな世界の重要な役割を担っているという考えが、彼の脳裏には常にあったのだろう。今になって粘菌が健康のために注目され出しているが、この時代、そこに目を向けた人が他にいただろうか。(102-103頁)