「正岡子規 生誕150年_郷党への愛」

司馬遼太郎『八人との対話』文春文庫
「師弟の風景 吉田松陰と正岡子規をめぐってーー大江健三郎」

 大江 (前略)そういえば、正岡子規が、愛媛出身の虚子や碧梧桐たちと何か一緒にやっていこうと思ったのも、一種のナショナリズム、愛郷心のようなナショナリズムの発露として考えられます。土地と、そこで生産された人間も含みこんだ、パトリオティズム、いい意味でのナショナリズムというものがあるように思うんです。子規も松陰も、弟子たちを熱情をこめて愛していますね。郷党の若い人たちを愛して、一緒に仕事をしていこうとする。そこに、教育のいちばんいいところがあるし、いちばんいいナショナリズムがあるんじゃないかと思います。(150頁)