夏目漱石「頭かくして」

松岡筆子「父 漱石」
十川信介 編『漱石追想』岩波文庫

まだ小さな時のことでございますが、私たちがいろは歌留多(かるた)を取って居ると父が時々入れて呉れと言って入って来ました。父はいつも『頭かくして』という札を後生大事にねらっているのでございます。それをどうかすると私たちに取られてしまいます。その時は両手で頭をかかえて参ってしまうのでございました。(378頁)
(註) 松岡筆子は、漱石夫妻の長女である。