「動詞_出世する」

白洲信哉 [編]『天才 青山二郎の眼力』(とんぼの本)新潮社

昭和17年夏、疎開中の伊東で青山が描いた、井戸茶碗の絵。『愛陶品目録』と称する和綴じ仕立ての中面に描かれたもの。「これだけは生涯持っていたい」と念じたのだろう。茶碗のまわりには、「女房の留守に / そっと出して / 可哀いがるべし / 夢手離すナ / 出世さすナ」などと描かれている(7頁)

世に出したくない、世間の風にあたらせたくない、という青山二郎の切なる願いである。別の頁では、「人が視たら蛙に化(な)れ」(66頁)ともいっている。美に憑かれた男の溺愛ぶりには、凄みを感じる。

下記、
青山二郎「意味も、精神も、すべて形に現れる」
小林秀雄に「あいつだけは天才だ」と言わしめた男
です。