井伏鱒二「ひたすらに平らかな言葉が行き交う」


「ひたすらに平らかな言葉が行き交う」
井伏鱒二著『井伏鱒二対談選』(講談社文芸文庫)

 またセキレイが交尾するのを見た記憶を、井伏鱒二は次のように語る。「二羽いっしょに、くるくる道の上をころがりながら、つむじ風に黄色の色紙が舞っているようで、きれいなものでしたね」
 鋭くとがったところのない言葉は、読み手の記憶に引っかき傷を残さない。やがて忘れられるだろう。ただ、良いものを読んだという思いは確実に根をおろす。