三遊亭金馬「江戸前の釣り・ハゼ」
「ぼくは毎年一二月いっぱいでハゼ釣りをしまい、中通しの糸を抜いて真水につけて塩出しをし、竿も真水でふいて油ぶきをして竿袋に入れ竿棚へあげておく。」
「昭和二十五年ごろまでは、上方で中通しのハゼ竿は売っていなかった。ハゼ釣りの乗合舟もなく、自分で舟を借りて手こぎで出るか、船頭をたのんでも舟をねって(こぐこと)くれない。イカリをおろして釣らせる。フナ竿のこわ目の竿先に糸を結びっきりで、おもしろ味もない。」
ハゼを「中通しの和竿」で釣るとは意外でした。中通しですから、感度もよく、ハゼをかけた際には竿はきれいな弧を描きますよね。舟で出て水深を合わせるには工夫が必要にななります。「中通しの和竿」とは、調べれば調べるほどに所有欲をかきたてられます。
数を競う釣り、大きさを競う釣りはもう卒業しました。お気に入りの道具仕立てで、思いのままに釣ることを心がけています。釣り味、釣趣などという言葉も最近になって覚えました。
「昔の釣り師はハゼの大きさに針素を合わせろとといって、二寸のハゼは針素二寸、魚が五寸になれば針素を五寸と教わっていた。」
ハリスをできるだけ短くして「夏ハゼ」を釣っていましたが、どうやら理にかなっていたようです。昔からの釣り師の言い伝えには重みがあります。