谷川俊太郎「春に」


中二生の二人の女の子たちが合唱コンクールで歌う自由曲を口ずさんでいました。聞くともなしに聞いていました。聞き覚えのある歌詞だなと思い、訊くとやはり谷川俊太郎さんの詩「春に」でした。

下記、谷川俊太郎さんの詩、「春に」です。一つ前の、光村図書出版の「国語 2」の教科書に載っていました。中学二年生になってはじめて学習する教材です。



春に

この気もちはなんだろう
目に見えないエネルギーの流れが
大地からあしのうらを伝わって
ぼくの腹へ胸へそうしてのどへ
声にならないさけびとなってこみあげる
この気もちはなんだろう
枝の先のふくらんだ新芽が心をつつく
よろこびだ しかしかなしみでもある
いらだちだ しかもやすらぎがある
あこがれだ そしていかりがかくれている
心のダムにせきとめられ
よどみ渦まきせめぎあい
いまあふれようとする
この気もちはなんだろう
あの空のあの青に手をひたしたい
まだ会ったことのないすべての人と
会ってみたい話してみたい
あしたとあさってが一度にくるといい
ぼくはもどかしい
地平線のかなたへと歩きつづけたい
そのくせこの草の上でじっとしていたい
大声でだれかを呼びたい
そのくせひとりで黙っていたい
この気もちはなんだろう