中井久夫「まだそのバランスシートは書かれていない」

「ある教育の帰結」
中井久夫コレクション『「思春期を考える」ことについて』ちくま学芸文庫
 高度成長は終わったが、そのバランスシートはまだ書かれていない。しかし、その中に損失として自然破壊とともに、青春期あるいは児童期の破壊を記してほしいものである。われわれは大量の緑とともに大量の青春を失ったと言えなくもない。(68頁)


 積読が活きた夏であった。
 一冊の本からそれは数冊の本へと波及し、そしてそのほとんどが積んである書籍で間に合った。結構な冊数の本が、いまだに積んだままになっている。有意味な収集であるが、日の目を見るかどうかは、また別の問題である。手元にあることに意義がある、と思っている。

◇ 白洲信哉 [編]『小林秀雄 美と出会う旅』(とんぼの本)新潮社
「最後まで愛した画家ルオー」
を昨夜ながめていた。
 そして、今朝早速、長年月にわたってご無沙汰していた、
『GEORGES ROUAULT』
を開いた。名古屋市美術館で、2006年に開催された「出光コレクションによる ルオー展」で求めたすてきな装丁の画集である。生来の欲張りである私は二冊購入した。表紙の色の異なる、表紙に貼りつけられた異なった絵(「11 小さな女曲馬師」と「23 キリスト(とパリサイ人たち)」の持ち重りのする画本である。
 そのほとんどをルオーの写真をながめて過ごしている。ルオーの人となりについて、思いをめぐらせている。観想については稿を改めて、ということにさせていただきたいと思う。
 私の積読における散財についての「バランスシートはまだ書かれていない」。書くまでもなく、勝ち抜け、とだけ記しておく。
 少し牽強に過ぎたでしょうか?
 たいへん遅ればせながらも、中井久夫先生への「夏見舞い」でした。