「カナカナゼミ_三日前の処暑の日に思う」
前略 D様
木立の中の、ツクツク法師の鳴きしきる湿原からの帰り道では、初老の夫妻に、
「この辺りにヒグラシはいますか」
と声をかけられましたので、
「はい、います」
と応え、ヒグラシの鳴く所へ案内しました。
「カナカナカナカナ、と鳴いているのが、ヒグラシです」
というと、しばらく耳を澄ませていました。しかし、
「違うな、これはアブラゼミだな」
と、とんでもない言葉を口にしましたので、長居は無用と、
「すみません、間違えたかもしれません」
といい、足早にその場を立ち去りました。
「分かりません」
とだけいって、通り過ぎるのが正解でした。
一人を楽しんでいる際には、他所様(よそさま)の介入は避けるのが本当でした。
木立の中の、ツクツク法師の鳴きしきる湿原からの帰り道では、初老の夫妻に、
「この辺りにヒグラシはいますか」
と声をかけられましたので、
「はい、います」
と応え、ヒグラシの鳴く所へ案内しました。
「カナカナカナカナ、と鳴いているのが、ヒグラシです」
というと、しばらく耳を澄ませていました。しかし、
「違うな、これはアブラゼミだな」
と、とんでもない言葉を口にしましたので、長居は無用と、
「すみません、間違えたかもしれません」
といい、足早にその場を立ち去りました。
「分かりません」
とだけいって、通り過ぎるのが正解でした。
一人を楽しんでいる際には、他所様(よそさま)の介入は避けるのが本当でした。
早々