「初秋の湿原を行く_ああもだえの子」

 昨夕初秋の湿原に行ってきました。素足にサンダル履きでの散策でした。サンダルはソールが薄く、土の感触、木道の感触が心地よく、歩くことが楽しみでした。
 あちこちにシラタマホシクサの群生がみられました。一週間前にはみられなかった景色です。雪白の珠は、皆小粒で、これから花期を迎えます。頭花を下から見やれば平たく、球体とばかり思っていた頭花は、半球であることを知りました。
 サギソウは見あたらず、自然は悠久かと思えば、さにあらず、「相似たる」にすぎません。

 後ろ手に、うつむきかげんの姿勢で歩くことが、いつしか習いとなりました。私から積極的に挨拶することはありませんよ、という表明です。道行く人たちとの、平地での挨拶は煩わしく、煩瑣です。
 予期せぬ、
「こんにちは」
の声に、
「こんにちは」
と応え、顔をあげると、そこには息も絶えだえの青年の顔がありました。
「お疲れのご様子ですね」
と声をかけると、
「あっ、いえ、はい」
との、弱々しい笑みと返事が返ってきました。
 道にでも迷ったのでしょうか。それとも、向こう見ずなトレッキングの成れの果てだったのでしょうか。命からがらの姿は、可笑しくて仕方ありませんでした。

 足繁く通いつめることにします。秋の湿原に遊びます。