「かゆみなき間に間に_陥穽にはまったの?墓穴を掘ったわけ?」


「保湿剤」について誤った認識をもっていました。

2017/04/24 の初診時に、「かゆみの原因は乾燥肌です」と医師に告げられました。乾燥肌が原因ならば、乾燥した外気に皮膚をさらさないように、処方していただいた軟膏(主成分は保湿剤)で皮膜をつくり、皮膚を保護してやればいいんだなと思いました。手にとった少量の軟膏を、できるだけ薄くのばして、皮膚にすり込むようにして塗布していました。

乾燥肌とは、「皮膚のいちばん表面にある、20ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)の薄さしかない角層とよばれる膜」(二頁)の「水分含有量」の「欠乏」に起因するものですが、「体内から角層を通しての水の補給は望めません。」(54頁)「(角層の)バリアが健全であるかぎり、外から水を補う工夫をしないと、皮表角層(皮膚表面の角層)はうるおいません。そのためには、塗ってから、いつまでも気持ちのよい保湿クリームを毎日使うことです。」(55頁)

2008/08/24 にAmazon に注文し、積読したままにしておいた、
田上八朗『皮膚の医学―肌荒れからアトピー性皮膚炎まで』中公新書
を、「かゆみなき間に間に」読み、茫然としました。大きな誤りをしていました。

 「このような薄い角層のシートで、水をいっぱいにいれた瓶の口を塞いでみると、何日たっても、水はちっとも減りません。つまり角層は、ゴム袋と同じように、水のような小さな分子でも通しにくい、生体がつくりあげたバリア膜、防御膜です。角層の上に細菌はもちろん、ウィルスのような小さな微生物をべったりと塗りつけたとしても、なかには入ってゆけません。このように、害をおよぼすものは通しにくい性質の膜でからだ全体を包んで保護し、さらにその内側を、繊維や細胞組織が裏打ちをしているのが基本的な皮膚の姿である、といってよいでしょう。」(4頁)

生体の70%以上を占める水分を蒸発しないように防いでいる角層に、体内から水分の補給がのぞめるはずはありません。「保湿」の意味をとり違えていました。

私はうるおいのある皮膚を乾燥した外気にさらさないこととを「保湿」だと思っていましたが、「保湿」とは外から皮膚に適度な水分を補うことだったのです。処方していただいた保湿クリームの使い方を誤っていました。皮膚に皮膜をつくるように薄く塗るのではなく、皮膚にうるおいをあたえるためにたっぷりと塗る必要があったのです。それに気づいたのが、三日前の 2017/05/07 のことでした。

その後、明らかに症状が改善されました。「痛みの閃光」が無くなりました。かゆみの猛威を前にして、かゆみに主導権を握られ、七転八倒し、転げまわり、眠れぬ夜を過ごすこともなくなりました。

今では、「皮膚のかゆみや痛みは皮膚の乾きであり渇きである」と考え、「かゆみや痛み」を感じたときには、軟膏をたっぷりと塗布するように心がけています。不思議なほど、「かゆみや痛み」は治まります。

保湿クリーム(保湿剤)と聞けば、化粧をする女性の方たちは、その使用目的や使用法を誤ることはないのでしょうが、私には、医師、看護師、または薬剤師さんの説明が、あるいは一枚の説明書きが必要でした。自ら墓穴を掘ったのか、あるいは陥穽にはまったのか、受診してから今日に至るまでに、GW をはさんで十六日の日が経っています。

あらためて積読の必要性、大切さを思います。一条の光が射してきました。しかし、治療は緒に就いたばかりです。完治するまで、「かゆみなき間に間に」を続けます。