「女の涙は請求書っぽいが、大の男の涙は人の心を摶(う)つ」


石橋冠(日本テレビ・ディレクター)、杉田成道(フジテレビ・ディレクター)「(対話)倉本脚本との格闘〔撮影の現場から〕」(北海学園、前掲『倉本聰研究』一七一頁

「女の涙は請求書っぽいが大の男の涙は人の心を摶(う)つ」
 日頃「男であること」を引っさげて、精一杯つっぱって生きている男たちではあるが、それにも自ずからなる限界がある。「男」が破綻をきたすことがある。男としての誇りをかなぐり捨て、人前で弱みをさらけだし、悲しみをさらさざるをえない刻が、突如男たちに襲いかかることがある。その最たるものは悲嘆の涙にくれる男たちの姿である。それは日頃男への強いこだわりをもつ男の涙だけにいっそう哀しく響き、我々の「心を摶つ」。

「倉本聰私論 ー『北の国から』のささやきー」
「第二章 5. 男であること」(14/21)より。