「落書」


当時キャンパス内のトイレの落書きには、オシャレなものが多くありました。公衆トイレで見かけるような下品なものは少なかったように記憶しています。学生たちはそれなりの矜持をもって落書きをしていたのだと思います。

以下、他大学の学生さんのお下劣な落書きです。
「俺は早稲田を蹴って東大に通っている」
当然早稲田の学生が黙っているはずもなく、トイレの壁面には、
「俺は東大を蹴って、足の指の爪をはがした」
との片言隻句が書かれていました。

「落書」のカテゴリーに分類されるものもたくさんありました。一つの「落書」に対して、幾つかの「落書」が書きこまれ、「落書」は次々に発展していきました。

数カ月に一度、トイレの壁を塗り替えているとのお話を職員の方からお聞きしました。白いペンキで上塗りすることは、黒板を黒板消しで消すのと同じ作業です。お化粧直しされた「ホワイトボード」が、次の「板書」を待ち受けています。

大学当局から落書きをやめるように通達があったことは一度もありません。大学側は古き良き伝統(?)を継承するために、トイレの壁面を「壁紙」として提供しているのだと思います。

早稲田のトイレはキレイです。落書きだらけでキタナイという方たちもいらっしゃるのでしょうが、それは美意識の違いであり、見解の相違です。少なくとも不潔ではありませんでした。清潔でした。