鈴木孝夫『日本語と外国語』岩波新書_「緑のリンゴ」


「真の国際理解を進める上で必読の、ことばについてのユニークな考察」

「ところが、リンゴといえば赤ではなく、緑と決まっている国があるのだ。その代表はフランスである。」

「よく日本人は、ある事物を形容するとき、《リンゴのような》とか《リンゴみたいに》という比喩を使う。いうまでもなく、それが意味するところは、何かが赤い、真赤だということである。」

「大変面白いことに、フランス語にも、まさに《リンゴのような》に当る comme une pomme という比喩がある。」

「フランス語には《リンゴのように丸い》という意味の慣用句があって、その用例としてヴィクトル・ユーゴーの作品から〈リンゴのような頬をした可愛い元気な男の子〉という文を引いている。したがって、ここでの《リンゴのように》は、明らかに色(緑色)ではなく、事物(頰)の丸さを表現しているわけだ。」(28-33頁)