中井久夫「なぜか患者さんはよくなる」の行方


中井久夫「なぜか患者さんはよくなる」の行方
2015/08/10
やはり、中井久夫『こんなとき私はどうしてきたか』医学書院 に書かれていました。中井久夫先生は精神科のお医者さんです。名文筆家としてもつとにご高名です。


「睡眠のリズムと夢作業」
睡眠は、精神健康を維持する基礎である。人間の精神活動は、眠らないでいると、しだいに乱れてくる。睡眠は、ちょうど昼間に主人が散らかしたものを夜中に忍びこんで、そっと片づけてゆく童話の小人たちのようだ。
●2日で収支を合わせる
1日不足した分を翌日補って睡眠の収支を合わせれば、精神健康を保てる。
●睡眠は「有能で老練な助手」
睡眠は、看護にも治療にも必要な「有能で老練な助手」である。精神だけでなく、免疫力をはじめ、病への抵抗力が向上する。

中井久夫先生はその著書『こんなとき私はどうしてきたか』のインタビュー記事の中で、
 「こんなこと言うでしょ?『若いときは病気はわかるけど病人はわからない。中年くらいになってくると病人がわかってくる。年を取ってくると、病気も病人もわからないけど、なぜか患者さんはよくなる』って。まあそれくらいのことは私も言えるかもしれないですけどね。」
とおっしゃられています。そして、この言葉を最後にこのインタビュー記事は終わっています。

◇「こんなこと言うでしょ?」の一文には「?」が付されています。
◇「年を取ってくると、病気も病人もわからないけど、なぜか患者さんはよくなる」って。◇「まあ『それくらいのこと』は『私も言える』『かもしれない』『ですけどね。』」

「年を取ってくると」、「病気」の一々や「病人」の一々がわからなくても「なぜか患者さんはよくなる」と中井先生はおっしゃられています。
が、いったい、
「なぜ」
「患者さんはよくなる」のでしょうか。

「中井久夫という全体」が「全身全霊」を傾けて、患者さんの「つらさ」「悲しみ」「苦しさ」のまるごとを、そのままに受け容れるから、「患者さんはよくなる」のでしょうか。

大切したい言葉です。このことにつきましては、「思いついた分」だけ、またの機会に書かせていただきたいと思っています。急ぐ必要はないと思っております。

追伸:「何もしないから治る」のかもしれません。が、「何もしない」ことは一大事です。

追記:河合隼雄さんは、京都大学の最終講義で、
「余計なことをしない、が心はかかわる」
とおっしゃられています。
講義名は、「コンステレーション ー 京都大学最終講義」でした。