向田邦子「あいつ、くすぐっちゃお!!」(全)
向田邦子「あいつ、くすぐっちゃお!!」
「そんなこと言うと、くすぐっちゃうぞ」
「金属バット事件を起こしたひと言」
「外国人にとっての言葉の重み」
「森繁さんの二つの名スピーチ」
「らしい言葉」の貧しさ
「江戸落語のしゃれたひと言」
「 “バカ野郎”も “畜生”もあったほうがいい」
私の曖昧な拙い記憶をたどって…。
相手に対して腹を立てたとき、「そんなこと言うと、くすぐっちゃうぞ」という言葉が、古今亭志ん生さん演ずる江戸落語の中に出てくる、というお話を向田邦子さんはされています。
いかにも穏やかで、余裕があり、ユーモアがあます。そして何よりも相手への気づかいがあります。
早速私もまねて、子どもたちに、
「こんなことも解らないと、くすぐっちゃおかな」
と、何度となく言ったことがあります。
が、いつもいつも、
「キモイー」
の一言で片づけられてしまいます。
本気で怒るときには、「くすぐっちゃうぞ」と呑気に構えているわけにはいきません。「くすぐちゃうぞ」では、こちらの「本気で怒っているぞというエネルギー」が相手に伝わりません。怒ると怖いとよく言われますが、怒ったときに怖くなかったら、怒った意味がありません。怒ると気分を害します。ふて寝をして気分を一新するしかありません。怒りたくはありません。が、立場上怒らなければ示しがつかないこともあります。
聞くと、中学校の先生方は怒ってばかりおられます。怒ることを仕事としている稀有な職業です。心の均衡がよく保てるな、と感心しております。
向田邦子「あいつ、くすぐっちゃお!!」(ボイスメモ)
向田邦子さんの「新潮カセット講演」、『言葉が怖い』を車内で聴きました。iPod touch のボイスメモに録音しました。鮮明にとはいえませんが、実用には何ら支障のない録音状態です。
「そんなこと言うと、くすぐっちゃうぞ」ではなく、「あいつ、くすぐっちゃお」の誤りでした。二つのことばの間にはおよそ懸隔があります。
「そんなこと言うと、くすぐっちゃうぞ」に対して、「あいつ、くすぐっちゃお」は、いかにもこなれていて、よどみがなく、丸く、ユーモアがあります。さすがに伝統の江戸落語です。誉れ高き話芸です。
古今亭志ん生さん演じる「火焔太鼓」を、向田邦子さんが聴かれてのお話でした。
記憶がいかにあてにならないかを、今回も身をもって知らされました。お恥ずかしい限りです。
頁をあらためて、書きます。Blogger には音声は埋め込めないのでしょうか。動画は挿入できるようなんですが、音声を動画に変換して埋め込めばいいのでしょうか?
向田邦子「あいつ、くすぐっちゃお!!」(音声ファイル)
「古今亭志ん生さん演じる「火焔太鼓」の中で、骨董屋の若旦那が女房にさんざんにこき下ろされ虚仮にされ、その仇(あだ)を討とうと企んでいる場面で、
「『帰ったら今日は女房にさんざんご馳走して腹一杯食わせて、あいつくすぐっちゃお』
という言葉が出てくるんですね。」
「あいつ、くすぐっちゃお」という「洒落たひとこと」に対して向田邦子さんは、
「あたたかみ」
「おかしみ」
「情(じょう)」
「人間の愚かさ」
を感じ、
「目頭が熱くなるんですね」
と話されています。
「人情の機微というものが非常にわかった方が偶然につけ加えたのか、志ん生さんがつけ加えたのか私わかりませんけれども…」
と、お話されています。
向田邦子さんの、古今亭志ん生「火焔太鼓」
飯島友治編『古典落語 志ん生集』ちくま文庫
NHK 落語シリーズ 五代目 古今亭志ん生「火焔太鼓」
YouTube にUPされている、古今亭志ん生「火焔太鼓」
上記のいずれにも「あいつ、くすぐっちゃお」という言葉は見つかりませんでした。志ん生さんが、いづれの時期かにつけ加えた言葉のような気がしてなりません。志ん生さんの「あいつ、くすぐっちゃお」に向田邦子さんが観応し、向田邦子さんの講演を聴かれた方々が呼応する。言葉の響きあいの妙を感じています。
私の手元には、「新潮カセット講演」 が7つあります。学生時代に買い求めたものばかりです。
小林秀雄「随想二題 ー 本居宣長をめぐって」
向田邦子「言葉が怖い」
大江健三郎「時代と小説 信仰を持たない者の祈り」
河合隼雄「新しい親子のあり方について」
鈴木大拙「禅と科学」
鈴木大拙「最も東洋的なるもの」
鈴木大拙「禅との出会い ー 私の自叙伝」
他に、小林秀雄「本居宣長」は、CDを購入しました。
車内では聴けるのですが、カセットプレーヤーを持っていないので、他所では聴くことができません。落語の、また音楽のテープを合わせるとかなり数のカセットテープがあります。
向田邦子さんの「そんなこと言うと、くすぐっちゃうぞ!!」と題したブログを書きました。曖昧な拙い記憶をもとにして書きました。一部を車内で聴きました。おしゃれで、品よくまとまっています。温かな声で、静かな語り口で、ゆったりとした時間が流れています。迷いはなくなりました。そして、つい今しがた注文しました。声が音や曲がデジタル化されて甦るのを楽しみにしています。
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レコード盤に刻まれている情報量のいかほどかがカセットテープに記録され、そのいかほどかがデジタル化されるのかはよくわかりませんが、音声情報はともかくとして音楽情報にいたっては問題外ですね。それが機器に依存するものなのか、テープの劣化によるものなのか、あるいは他に原因があるのかはよくわかりませんが、こと私に関しましてはお話にならない、というのが実状です。無理ですね。残念ながらあきらめました。講演のテープだけでもデジタル化でき、満足しています。これ以上のことは望んでいません。今後はカセットテープ・プレイヤーとして、使いたいと思っています。