中井久夫「なぜか患者さんはよくなる」(全)
中井久夫「なぜか患者さんはよくなる」
2015/08/10
2015/08/10
中井久夫先生のいずれかの書物のなかでの言葉です、と断言できるのですが…。
のなかに書かれていたような気がしてならないのですが…。インターネットで検索しても出てきません。わかりしだいお伝えいたします。
福岡伸一さんの『生物と無生物の間』講談社現代新書 は、Amazon から九冊を購入しています。書店で購入したものも合わせると十数冊の『生物と無生物の間』を購入したことになります。もちろん私の手元には一冊もありません。結構な金額になります。出るのはため息ばかりです。
『生物と無生物のあいだ』は 2007/05/18 に出版されました。私が『日経BP』の書評欄を見て、買いあさり始めたのが 2007/06/25 のことです。
そして、福岡伸一さんは、
2007年には【第29回サントリー学芸賞<社会・風俗部門>】
を受賞され、
2008年には【第1回新書大賞】
を受賞されました。
そして、また幾星霜が過ぎ、
Amazon の最後の履歴には 2015/05/15 の日付が付されています。
我ながらあきれるばかりです。
中井久夫「なぜか患者さんはよくなる」の行方
2015/08/10
やはり、中井久夫『こんなとき私はどうしてきたか』医学書院 (200頁)に書かれていました。中井久夫先生はその著書『こんなとき私はどうしてきたか』のインタビュー記事の中で、
「こんなこと言うでしょ?『若いときは病気はわかるけど病人はわからない。中年くらいになってくると病人がわかってくる。年を取ってくると、病気も病人もわからないけど、なぜか患者さんはよくなる』って。まあそれくらいのことは私も言えるかもしれないすけどね。」
とおっしゃられています。そして、この言葉を最後にこのインタビュー記事は終わっています。
◇「こんなこと言うでしょ?」の一文には「?」が付されています。
◇「年を取ってくると、病気も病人もわからないけど、なぜか患者さんはよくなる」って。
◇「まあ『それくらいのこと』は『私も言える』『かもしれない』『ですけどね。』」
◇「まあ『それくらいのこと』は『私も言える』『かもしれない』『ですけどね。』」
「年を取ってくると」、「病気」の一々や「病人」の一々がわからなくても、「なぜか患者さんはよくなる」と中井先生はおっしゃられていますが、いったいなぜ、「患者さんはよくなる」のでしょうか。
中井久夫という全体が、全身全霊を傾けて、患者さんの一切を受容するから、「患者さんはよくなる」のでしょうか。大切にしたい言葉です。このことにつきましては、「思いついた分」だけ、またの機会に書かせていただきたいと思っております。急ぐ必要はないと思っています。
追伸:「何もしないから治る」のかもしれませんが、「何もしない」ことは一大事です。
追記:河合隼雄さんは、京都大学の最終講義で、
「余計なことをしない、が心はかかわる」
とおっしゃられています。
講義名は、「コンステレーション ー 京都大学最終講義」でした。
中井久夫「なぜか患者さんはよくなる」ことの因るところ
2015/08/22
◇中井久夫
「こんなこと言うでしょ?『若いときは病気はわかるけど病人はわからない。中年くらいになってくると病人がわかってくる。年を取ってくると、病気も病人もわからないけど、なぜか患者さんはよくなる』って。まあそれくらいのことは私も言えるかもしれないですでけどね。」
◇茂木健一郎 / 江村哲二
江村 音楽の世界なら、バーンスタインが言っているけれども「自分が指揮者になれるか、自分に指揮者の能力があるかどうか、など考えたこともなかった。ただただ音楽が好きで好きで仕方なくて音楽をやっていた」と。実際にウィーン・フィルのコントラバス奏者から聞いたのですが、バーンスタインの振る指揮棒は、全然テクニックがないらしい。でもそれでいいんだと言う。「テクニックなんて全く持ってない。ただハートがすばらしい。あの人が来るだけで、あのハートに酔っちゃうんだ」と言っていました。
茂木 バーンスタインについては同じような話を僕も聞いたことがある。前に立つだけで音楽が変わっちゃうって言いますね。
江村 あの人が出てくると棒なんてものは、はっきり言っていらないんだって(笑)。
茂木 江村さんのご友人の大野和士さんも、先日私が司会をしているNHKの番組( 『プロフェッショナル 仕事の流儀』)に出られたときに、「最後は指揮者は振らなくていいんだ。究極は、じいっと彫像のようにそこにいるだけで音楽が変わるということが指揮者の理想なんだ」と言っていました。
◇「最後は指揮者は振らなくていい」ことの拠りどころ。
◇「なぜか患者さんはよくなる」ことの因るところ。
◇ 全存在が全存在を鼓舞する。
茂木健一郎 / 江村哲二『音楽を「考える」』ちくまプリマー新書(四八-四九頁)