白洲正子「美神は常に嫉妬深い」

白洲正子「『ある回想』を読んで」
白洲正子『名人は危うきに遊ぶ』新潮社(181,182,186頁)
野々上慶一の『ある回想 小林秀雄と河上徹太郎』を読んだ時、私は感動してすぐ電話をかけた。もしかすると、手紙をあげたのかも知れないが、それはどちらでもいい。その前に書いた『高級な友情』が、何となく歯切れが悪かったため、今度は身を張って書いたという印象が強烈で、人の心に迫るものがあった。男の友情とはナンテ美しいものだろう。しいて云えば、そのひと言につきるが、今時こういうものが書ける人は少い。
(中略)
そんな抽象的なことをいっても意味がないが、『高級な友情』というのがそもそも抽象的な事柄なので、そんなものはこの地球上には存在し得ない。美神は常に嫉妬深い。それほど美しいものを人間に許してなるものか。
(中略)
 まことの友情とはそうしたものであろう。何も高級である必要はない。読み了えて私は心の底からそう思った。

以下、
「いま最も気になる、坂本睦子という女性」
小林秀雄「河上(徹太郎)の方が大事なんだ」
です。