小林秀雄「絵を見るとは、一種の退屈に堪える練習である」

小林秀雄『偶像崇拝』
小林秀雄『モオツァルト・無常という事』 新潮文庫
『偶像崇拝』は、多くの話題から成っている。絵画に題材をとり、惜しげもなく展覧された作品群は、どれ一つとってみても秀逸で、瞠目するばかりである。

「絵を見るとは一種の練習である。練習するかしないかが問題だ。私も現代人であるから敢えて言うが、絵を見るとは、解っても解らなくても一向平気な一種の退屈に堪える練習である。練習して勝負に勝つのでもなければ、快楽を得るのでもない。理解する事とは全く別種な認識を得る練習だ。現代日本という文化国家は、文化を談じ乍(なが)ら、こういう寡黙(かもく)な認識を全く侮蔑(ぶべつ)している。そしてそれに気附いていない。」(218頁)


けっして他人事(ひとごと)ではなく、小林秀雄の達観である。達見である。