「小林秀雄、梅原龍三郎と美術を語る」

「梅原龍三郎 美術を語る」
『直観を磨くもの ー 小林秀雄対談集 ー』新潮文庫(293-337頁)

梅原 (前略)それよりも新しい画の代表的なものはポール・クレーね、今日の新しいいろんな要素を、ほとんどあの人一人でやっているんじゃないか、といったような気がするんだけどもね。(後略)

梅原 しかし、あの美しい要素というものは、やはり自然からぬき出してるんじゃないかと思うけれどね、美しさというものは、やはり自然の美しさと並行したものであってね、背馳(はいち)したものじゃないと思うんだけどね。それがこのごろは自然を否定してかかるようなものがあるんじゃないかと思う。そういうものは発展の道がないんじゃないかと思うけどもね。
小林 そう。クレーなんていう人のほうが(ピカソより)徹底してますね。
梅原 そう。
(319-320頁)

 お二人の闊達な会話はあちこちに飛び火して、障るものがない。一人私だけが蚊帳の外にとり残されて、新奇な会話に耳をそばだてていた。驚くのは、両雄の感性には、共通項が非常に多いということである。また、齟齬が生じた際には、自らの見解を披瀝しているが、これは並大抵のことではない。
   人にはときに刺激が必要であるが、あまりにも強い刺激はあってなきが如しである。終始、目を白黒させていた。

以下、
小林秀雄「梅原さんの言葉は絵なんだ」
「小林秀雄、梅原龍三郎とピカソの腕力を語る」
です。