「幸福とは、幸福の予感である」
「幸福とは、幸福の予感であるーー。だれであったか、そう書いていた作家がいた。どんなたぐいの幸福にせよ、またそれが実現するにせよしないにせよ、幸福のうれしい予感に胸をさわがせるときが、まず何よりの幸福である。そのような意味であったと思う。
読書にも、まったくおなじように、じっさいに本を読むまえの幸福というものがある。読まないうちに幸福を予感する。読書にとって、これがとてもたいせつなことだ。
フランスの作家ヴァレリー・ラルボーに『罰せられざる悪徳・読書』という、憎いくらいに気のきいた題名のエッセイがあるが、
(後略)」
山村 修『増補 遅読のすすめ』ちくま文庫(49-50頁)
佐伯彰一 『読書という悪徳 』文藝春秋 が積読のままになっています。
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
夜を日に継いで古今東西の書物を読み求め、酷使のあげく、片眼を喪ってしまった、稀代の活字ドン・ファンによる本の渉猟記。世の心優しき読書子へ贈る、毒に満ちたエール。
内容(「MARC」データベースより)
片眼失明のうきめに会いながらもやめられない読書という名の悪徳、有名な作家による性的自伝のたくみさ、手紙が文学になる時など、ノンフィクションを読むことの楽しさを縦横無尽に語る。