小林秀雄,岡潔『人間の建設』新潮文庫

 昨夕届き、今日の午前中には読み終えた。その後拾い読みした。
 小林秀雄と岡潔による高級な「対話編」である。話題は多岐におよぶが、両氏がうなずき合っているところがおもしろい。
 岡潔の日本を日本人を思う気持ちは深刻である。それは小林秀雄に、
「あなた、そんなに日本主義ですか」(139頁)
と言わしめるほどである。岡潔の憂いは、故国日本の再評価と表裏をなすものである。
 以下、再掲である。


『対話・人間の建設』
 河上徹太郎『わが小林秀雄』昭和出版 
 「こんなにうまの合つた、ほのぼのと暖い(小林秀雄と岡潔の)対談は、当今どんな誌上にも見当らない。聞けばこの初対面の二人が、延々十一時間しやべり続けて、一度も中座しなかつたさうである。
 私の読後感を一言でいへば、これを読んで非常に安心した、気持が落着いた、といふことである。つまり今の時節に誰かがいはねばならぬ一番大切なことを、はつきりと、声を大きくしていひ切つてくれたといふ同感の念である。」(193頁)
と、河上徹太郎は述べ、そしてそれは下記に続く。
「学問は苦しんで、そして自分で発見するものである。さういつたことを、例へば小林君は評論を書く時言葉を発見する上で苦労し、岡さんは函数理論を築いてゆく上で苦労してきた。この苦労の打明け話がたまたま二人の共鳴を呼び、話に花を咲かせたのである。
 だから二人共全然理論を弄ばない、実感だけで語つてゐる。それも専ら体験的な苦労による実感だから、重厚であつて、重なり合ふと狂ひがない」(194頁)


下記、岡潔「『春宵十話』角川ソフィア文庫_まとめて」です。
岡潔「情緒、その人の中心をなすもの」
岡潔「数学に最も近い職業は百姓だといえる」
岡潔「たちまちのうちに解るとき」
岡潔「すべて成熟は早すぎるよりも遅すぎる方がよい」