「小林秀雄,岡潔『人間の建設』_あれ、哲学の専門書じゃないからです」

 プラトンをお好きで、ずいぶんお読みになったようですね。
小林 好きなんですが、ただ漫然と読むので。好きな理由は、たいへん簡単なことなのでして。あれ、哲学の専門書じゃないからです。専門語なんてひとつもありません。定義を知らないものにはわからないという不便がないからです。こちらが頭をはっきりと保って、あの人の言うなりになっていれば、予備知識なしに、物事をとことんまで考えさせてくれるからです。材料は具体的で豊富ですし。
(136-137頁)