河上徹太郎「如水の交わり」
「小林と私」
河上徹太郎『わが小林秀雄』昭和出版
彼とのつき合ひも中学上級以来からだから随分古い。古い点ではお互に最古参だらう。文壇では二人を親友の部類にいれてゐる。いはれて不服はないが、然し考へて見ると、深入りしてつき合った時期は先づない。(61-62頁)
遊びに来て一言も口をきかないで、それでつき合ひの目的を達して別れた覚えもある。「君子の交り淡々として水の如し」といふのはこのことなのだらうか?(61-62頁)
私は新潮社版の小林秀雄全集(一九五五〜五七年)の全巻解説を書いてゐるが、やつて見るとかういふ仕事は今までの友情の総決算みたいで、楽しいものである。(63頁)