小林秀雄「評家の悪癖を重ねる」

「正宗白鳥の作について」
『小林秀雄全作品 別巻2 感想 下』新潮社
この文章は、講演の速記を土台として作ったものであるから、引用が多くなる。だが、引用文はすべて私が熟読し沈黙したものである事に留意されたい。批評は原文を熟読し沈黙するに極まる。作品が優秀でさえあれば、必ずそうなる。近頃はそればかり思うようになった。そう言っただけで、批評で苦労した人には通ずると思うようになった。批評しようとする意識が、原文の熟読を妨げるという評家の悪癖を、あんまり重ねて来たせいであろうか。(189-190頁)

 「正宗白鳥の作について」は、小林秀雄 最晩年の作品であり、(未完)で終わっている。
 小林秀雄が最晩年に「熟読し沈黙した」引用文にも関わらず、先を急ぐあまり私は速く読んでいる。初学者の悪癖、誤りを繰り返している。再読を約しているから、という甘えもある。
 近日中に、「暑気払いに_小林秀雄の遺作『正宗白鳥の作について』を読んで」を書く予定でいる。