「かわいそう」


人は皆「かわいそう」といえば「かわいそう」で、「かわいそう」でない人はなく…。

中学生の女の子たちは、
「かわいそう」
という言葉をよく口にします。
「〜さん、かわいそう」
私も、彼女たちに、
「かわいそう」
といわれたことが何度かあります。

彼女たちは、「かわいそう」といわれた人の気持ちを考えたことがあるのでしょうか。その「かわいそう」を、相手はどう受けとめているのか、「かわいそう」と他人(ひと)からいわれるほど「かわいそう」なことはなく、「かわいそう」からはなにもはじまりません。

「かわいそう」と、中学生の女の子にいわれると、私は身の置き場に困り、いたたまれなくなります。困惑し、落ち着きを欠きます。彼女たちは、「同類相憐れむ」ことを楽しんでいるかのようにみえます。私には「相憐れむ」という趣味はなく、「かわいそう」ごっこにおつき合いするには年齢(とし)をとりすぎています。ちなみに、黙して語らず、黙して語れず、という感情の表出もあります。察し合いの世界です。