「教育の浄化と再生_齋藤孝氏のイライラ」

齋藤孝,梅田望夫『私塾のすすめ ー ここから創造が生まれる』ちくま新書(74-75頁)
 どの層に伝えたいかというと、現実を変えるために、教師の方たちにがんばってもらわなきゃ、という思いはあります。子どもたちについては、全体を底上げすることに使命感をもっています。だから、小学校の国語の教科書に強い関心がある。みんなが読んでいるものですから。そのレベルが低いとイライラしてしまう。小学校の国語の教科書の薄さに日本で一番イライラしているのは、たぶん僕です(笑)。そのものすごく怒りに燃えている気持ちが共有されない。なんで、自分だけがこんなにイライラしているのか、と思います。

英語教育の偏重、国語教育蔑視の時流に大きな疑問を抱いています。国語で扱う文章と同じ質の、同等の内容をもった文章を、子どもたちが英語で読めるとでもお考えなのでしょうか。ゆとり教育の時代には、あなたたちはゆとり教育時代の失敗作だ、と私は子どもたちに言ってはばかりませんでした。ゆとり教育の失政はじゅうぶんに顧みられることなく、愚かにも同じ轍を踏んでいるのですから、この国の行方が気になります。誰が責任を負ったのでしょうか。誰が責任を負うのでしょうか。たとえ教育行政の責任者が、記者会見の場で誤りを認め、謝罪の弁を述べ、頭を下げたとしても、とり返しのつくような問題ではありません。