福澤諭吉「平等のすすめ?」
この人口に膾炙した冒頭部分だけがひとり歩きをし、福澤諭吉は「平等のすすめ」を説いた、と勘違いされている方々がかなりの数にのぼると思っています。福澤諭吉は「平等のすすめ」ではなく、『学問のすすめ』を説いたのは、至極当然のことです。
されども今、広くこの人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、その有様雲と泥(どろ)との相違あるに似たるはなんぞや。その次第はなはだ明らかなり。『実語教(じつごきょう)』に、「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」とあり。されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり。
(後略)