河合隼雄「考えが行き詰まったら寝たほうがまし」


考えが行き詰まったら寝たほうがましーー河合」
 谷川さんが仰(おっしゃ)るとおり、僕も人間が本当に集中できるのは一時間以内だと思いますね。せいぜい四十分か四十五分ぐらいじゃないかという気がします。
 原稿を書いてる時に、だんだん行き詰まってきて憂鬱(ゆううつ)になってくるでしょ。そういう時に、昔は「書かないかん、書かないかん」と思って、なんやかんやと焦ったものです。焦っていろんなことをしてみるわけですが、結局書けないまま時間がどんどん経って、締切が近づいてくるということがよくあったんですよ。ところが、このごろは焦るのをやめたんです。じゃあどうするかというと、書いていて行き詰まったら、パッとそこで寝るんですよ(笑)。
 僕は書き物をする時は座り机なんですが、最近では寝る時のために背中の後ろに枕を置いてあるんです。昔はそこに広辞苑が置いてあって、それを枕に寝たこともありましたが、このごろはちょっと昇格して枕を置いてあるんですね。それで、行き詰まったらバタッと後ろに倒れて寝る。その時には十五分寝るとか心に決めておくんです。それで、パッと目が覚めて起きてみると、行き詰まってた原稿があんがいさらりと書けるんですね。
 それで、ものすごい能率が上がります。それを以前は「途中でやめたらあかん」と思って頑張ってたわけですが、頑張っても結局そんな時は頭が働いてないんですね。それで時間ばかり経ってしまう。長い時間をかけているから頑張ってるようだけど、本当は何もやってないわけですね。それだったら寝るほうがよっぽどいいです。(137-138頁)

ベッドの横に長テーブルが置いてあります。その長テーブルが私の机であり、ベッドのマットレスが私の椅子です。長時間座っていても、おしりが痛くならないように、ニトリの低反発シートクッションを敷いています。私も河合隼雄さんと同じように、たとえば数学の三平方の定理と相似な図形の融合問題、たとえば理科の電気回路や天体の応用問題、また作文等々に行き詰まったときには、寝ることにしています。ベッドに身を横たえて寝るわけですから、こと寝ることにかけては、河合隼雄さんより私の方が本格的であり、用意周到です。河合隼雄さんは、「その時には十五分寝るとか心に決めておくんです」とおっしゃられていますが、これは私にはない習慣です。早速試してみたいと思っています。私は、不愉快なことがあってどうにも気がおさまらないときにも、さっさと寝ることにしています。「ふて寝」と称していますが、河合隼雄さんのお話をうかがった今、「不貞寝」とは、あまりにも礼を欠いた呼び名のように感じています。


「ふて寝」で検索すると、以下のような言葉が見つかりました。

「トラブル時は『ふて寝、ふて風呂』で乗り切ろう」
「『やけ食い、やけ酒』は、いいことなし」
「『ふて寝』と『ふて風呂』は本当にお勧めです。」