「雨上がりの秋の湿原を行く_紫を手にしたくて」

 今日の予報は「雨のち曇り」。 
 ホソバリンドウの花の高貴な紫をどうしてもカメラにおさめたくて、昨夕来 光の加減のことばかりを思っていました。「雨のち曇り」の天気については思ってもみないことでした。これで秋の陽光への気づかいはなくなりました。
 「秋雨のそぼ降る湿原を行く」のも一興です。時機をみはからっています。
 駐車場に着くころには雨はあがりました。山の谷あいからは雲がわき、あたりはいつになく静まりかえっていました。
 ぬかるみを避け、今日はいつもとは違う入り口から湿原に入りました。頭に順路を描きながら、秋雨にぬれた木道上を慎重に歩きました。雨に洗われた秋の千草は、あるいは穂をつけ、あるいは花を、あるいは結実し、それぞれが光彩を放ち、匂いたつばかりでした。
 お目当てのホソバリンドウを目の前にして立ちすくみました。ホソバリンドウは、アサガオのつぼみのように、かたく花弁を閉じていました。予想だにしなかったことにあわてました。月の明るい夜には花を開くのでしょうか、そんなことを思いました。出直しです。
 が、思いがけなくも、鮮やかな黄色の花をつけたいく株かのミミカキグサを見つけ、目を見張りました。数年来の願いがかないました。生あるものの発色は鮮明です。血が通っているからでしょう。
 昨日は里山のとっつきまで行ったものの、列をなして下山してくる登山者に恐れを覚え踵を返しましたが、今日は人の気配はなくとっつきから急登し、登山道を下りてきました。途中いく筋もの水の流れを目にしました。湿原の生命線です。
 下山後には、かたく口を閉ざしたホソバリンドウとまばゆい黄色の花をつけたミミカキグサを確かめ、帰路につきました。
 今しばらく、「秋の湿原を行く」を続けます。