白洲正子「銭金じゃあねえから、何とかせい」

白洲正子『日本のたくみ』新潮文庫
2018/01/09
用を足したついでに、なに当てにするともなく、書店に立ち寄りました。
白洲正子『日本のたくみ』新潮文庫
は、書棚に並んでいましたが、
白洲正子『私の古寺巡礼』講談社文芸文庫
は、ありませんでした。

『日本のたくみ』を買って帰りました。早速数編の作品を読みました。院内読書です。「韋駄天お正」の本領発揮です。足で書かれた本です。白洲正子のいつもの叙情は散見されるばかりで、叙事に終始していますが、「たくみ」の抒情がそれを補って余りあります。

2018/01/13
「水晶のふる里―朝山早苗」
今度の朝山さんの作品は、細工師が上部の波型の部分を切ったが、やはりはじめは断ったので、今沢さんが「銭金じゃあねえから、何とかせい」と、無理やりおしつけて成功したという。(145-146頁)

 「たくみ」の世界とは、目的意識とか、ときに無欲という欲も無心という心さえ障りのある世界であることを知った。実に多くの裏方さんたちの「愛情と努力」よって支えられている世界だった。
 名匠たちによって織り成された綾は、初春には誠にふさわしく、清々しい作品であった。また、当作品でも、河合隼雄があだ名した「白洲正宗」の切っ先は鋭く、健在であった。新春の夢見心地はきっぱり払拭された。

「糸に学ぶ―田島隆夫」
なかでも「結城の在に名人のお婆さんがいて、死ぬ前に寝床の中でひいた」という「死花」の話は、人の心をうつ。(202頁)