「『動詞_凍てつく』夜に」

 一昨夜小雪が舞いました。凍てつく夜を、病院内で過ごしました。「せん妄」の症状とみられる、父の深夜のいたずらの見張り番です。
 寝るに寝つけず、「灯火親しむ候」よろしく、病室内の洗面台の灯下で院内読書をし、また疲れると、簡易ベッドに横になる、といったことを何度か繰り返しました。
 途中喫煙のため外出しました。小雪まじりの寒風の吹きすさぶなか、立ちすくしていました。が、平気でした。レイヤリング(重ね着)に間違いはありませんでした。この試着には、寒風の吹きすさび「小雪の降りかかる」、凍てつく夜がぜひ必要でした。試用なき本番は危険です。
 「夜の底」が白み、窓外を見下ろすと、辺り一面がうっすらと雪化粧していました。
 目付役の監視の目が厳しかったのか、父はおとなしく寝ていました。
 陽が昇り、道路の凍結がみられなくなるころを待って帰宅しました。
 今夜もつき添いをお願いします、との電話がありました。たとえつき添い人といえども、病院内で、不健康で非社会的な一夜を過ごすことについては、多少の矛盾を感じないわけではありませんが、院内をみわたせば、不健康な夜を強いられている、医療に携わる方たちの姿ばかりが目につき、医療現場といえども、社会の特異点たるはずもなく、病の温床のようにもみえ、やはり逆説に満ちていました。