「井筒俊彦『マホメット』講談社学術文庫_井筒俊彦 読書覚書」
「のちにふれるが、井筒(俊彦)が書いた預言者伝『マホメット』を一読すれば、さらに判然とする。読む者は、小林(秀雄)のランボー論や「モオツァルト」と同質の律動を感じるだろう。」(5頁)
つい今しがた、
井筒俊彦『マホメット』講談社学術文庫
を読み了えました。
110頁あまりの内容の文庫本ですが、井筒俊彦が、どれだけの原典に当たり、どれほどの論考を重ねたのかについて思いをいたしたとき、気が遠くなります。
「マホメットは西暦六世紀の末に生れ、七世紀の前半に神の使徒として活躍した。すなわち、彼は我々の歴史時代に属している。イスラームの発祥は歴史時代の真只中で、いわば真昼の照明の下で堂々と演じられた活劇だ。その点でもマホメットは他の全ての世界的宗教の始祖たちとは違う。
(中略)
しかしいかに臆面のない実証家でもイスラームの始祖マホメットの実在性にだけは一指も触れることはできないのだ。彼は現にそこにいる。我々の目の前に、我々の手のとどく直ぐそこに。」(73-74頁)
との言葉は鮮やかです。
読み重ねるほどに、井筒俊彦の天才を思います。また、学究生活という地平の彼方を見晴るかす、井筒俊彦の構想は、専らであり壮大です。
「井筒俊彦読書週間」を続けます。