「2017年 初春の湿原を行く」
枯葉をよけ、まっ先にイワタカンアオイが花をつけているのを確かめました。初春(はつはる)の花です。昨春の一月四日にGさんに教えていただいた花です。
やわらかな土の感触の、枯葉の散りしいた、木道の、凹凸のある道を久しぶりに歩きました。指のつけ根で地面を押すようにして歩くと、足の指が伸びやかに広がり、その心地よさを味わいながら足を運びました。
湿原の南面は、植生回復作業のため雑木が切られ、ざれ場さながらでした。湿原をぬけ、急登を登りきり、登山道とぶつかる地点までを目標に歩きました。あっけなく登ることができ、あわてました。疲れを感じないほど鈍感な体になったとしか考えられませんでした。哀しいかな、思いがけずも、初春早々老いを目のあたりにしました。
帰りには、アピタ(大規模小売店)の立体駐車場の屋上に立ちすくみ、「山のは」に沈む夕日をながめました。山なみの「山ぎは」にかかった雲が朱に煙っていました。WALTZ(珈琲専門店)の福袋を提げて車にもどると、コンパスで引いたような、新月から一日目のか細い月が、西の空にかかっていました。