「浴衣と白装束との切っても切れない関係」


 豊橋祇園祭は吉田神社の大祭です。豊橋三大祭の一つです。吉田神社は手筒花火発祥の地として知られています。

 昨夜は一万二千発の打ち上げ花火が奉納されました。自宅から豊川河川敷の花火の発射地点までは1Kmとは離れておらず、その人いきれと喧騒たるや身のおきばもなく、今年もそそくさと遁走しました。

 逃避行中の車窓から、何人かの浴衣姿の、高校生かと思われる女の子を目にしました。薄明時に見る白地に赤、白地に紺の図柄をあしらった浴衣はいかにも妖しくはかなげで、白装束そのものでした。今生の見納めと意を決して、死装束をまとっての、彼、彼氏との一世一代の花火見物と、そんな風に私の目には映りました。見れば顔色も悪く、足取りもおぼつかなく、年若き娘との死別を思ったとき、いたたまれない気持ちになりました。

  ふりほどけぬままに、今も昨夕の浴衣姿が頭を占めています。白装束は死出の旅の正装です。彼女たちは私に、「死出の旅の準備を急げ」と告げているのでしょうか。もしそうだとすれば、若い娘たちからのこんなにありがたい忠告は他になく、早速 準備を急ぐことにします。