西江雅之「翻訳とは『演奏』である」
西江雅之『「ことば」の課外授業』洋泉社
† 翻訳とは「演奏」である
言語は互いに「置き換えられる」という話と「翻訳」の話とは大いに違うんです。
翻訳というのは、ある言語で表現されたことを、意味の上でも形の上でも原文に近い形を保ちながら、ほかの言語に置き換えることです。その置き換えは、制約の中での一種の「演奏」なんです。つまり、本来の文章をいかに訳すかは、翻訳者の腕によるわけです。(106-108頁)
「翻訳」は「演奏」です。創造的な行為によって、楽譜は音に昇華され、立ち上がっていくわけですから、それは「愉楽にみち」ていることでしょうし、またそれは、楽譜から逸脱することは許されないという、一定のルールの下で行われる「ゲーム」にも似ています。一定のルールにさえしたがえば、あとは自由です。自分の裁量で動くことができます。