「書籍三題」


昨日 アピタ・向山店(大規模小売店)の特設売り場で、『名文で巡る国宝の十一面観音』青草書房 を買いました。「渡岸寺(どうがんじ)の十一面観音」に寄せる、白洲正子さん、梅原猛さん、吉村貞司さん、お三方のそれぞれの思いが綴られた文章が載っており、知らんぷりして通り過ぎることはできませんでした。

特設売り場には「新本 全品半額」のノボリが掲げられ、本のカバーには、「BB 自由価格本」と書かれた赤いシールが、バーコードの上に貼ってありました。「自由価格本」というからには、それぞれの書店が自由に価格を決めるんだなと思い、定価の半額の値段は安いのか高いのかは皆目見当もつかず、「BB」にいたってはさっぱりわかりませんでした。

帰宅し、早速インターネットで検索すると、「BB」とは「バーゲンブック」のことで、…
バーゲンブックとは?
 出版物は<定価販売>だけだと思っていませんか?
 バーゲンブックとは定価より値引きされた書籍や雑誌のことを言います。書籍は一般的に再販売価格維持制度に基づいて流通されています。
 再販売価格維持制度とは出版社(製造者)が書店(小売店)に対して定価で書籍や雑誌を販売するように働きかけることが出来る制度です。
 つまり本は普通定価で販売されており、値引きはされません。しかし、出版社の意思により値引きの対象とされた書籍に限り、定価よりも安い価格で販売できます。そうして値引きされた本を「バーゲンブック」「自由価格本」「読者謝恩本」「非再販本」などと呼びます。
 このような本は定価で流通し書店で一度並べられたが、最終的に出版社に返品され在庫として眠っていた本がほとんどです。それら休眠在庫がバーゲンブックという形で再び読者の目に触れられることが出来るのです。
と、すぐに調べがつきました。あちこちのサイトを見て回り、おおよそのことをしました。バーゲンブックについては、いろいろ問題点も指摘されていますが、裁断し処分してしまうのは、もったいない話です。


昨日は夕方からメールに振り回されていました。意をつくし、言葉をつくして書く必要のあるメールばかりでしたので、時間もかかり消耗もし、昨夜はそれで終わってしまいました。自分の思いを文字にするのはしんどいですね

ネットサーフィンをしながら返信を待っていました。Amazon で、和辻哲郎の『古寺巡礼』を検索すると、
という電子書籍が見つかりました。99円の定価がついています。目を疑いました。そして、同じ頁には、南方熊楠、折口信夫、柳田国男、柳宗悦、永井荷風、とそうそうたる顔ぶれの「作品集」「全集」「完全版」と銘打たれた電子書籍版の全集の案内が載っていました。「吉川英治」で検索すると、
『三国志 全12巻』、『私本太平記 全13巻』、『宮本武蔵 全8巻』を含む、
が、 200円でした。

電子書籍時代到来の予感がしました。とはいえ、Amazon が電子書籍業界に参入した際には、マスコミにも多分に踊らされ、電子書籍時代の到来を確信しソニーの「Reader」を買い、しかしその遅い動作や低い解像度に嫌気がさし、Amazon の「Kindle」を買い、今はいずれもさしあげてしまった私の予感ですのでアテにはなりませんが…。『黒子のバスケ』を読むために「Reader」を、また「Kindle」を買ったようなものでした。当時の「Reader」は解像度が低く、とても『黒子のバスケ』を読む気にはなりませんでした。

新刊本の電子書籍の思い切った値下げによる「紙の本」との差別化、豊富な品ぞろえ、また電子書籍リーダーの品質の向上によって、近い将来電子書籍と「紙の本」とが住み分けをする時代がやってくると思います。読者は互いの長短を見極め、相補的な関係を築き(いいとこ取りをし)、電子書籍と「紙の本」とを巧みに使い分けるようになると思います。「自炊」と称して自らの蔵書を自らの手でデジタルデータ化する人たちがいることは、その証左といえなくもありません。


あれこれの全集を、終始あっけにとられて見ていました。

「2016年になり、新しくパブリック・ドメインのコンテンツが追加されました。本年のパプリックドメインのビックネームは『江戸川乱歩』『谷崎潤一郎』のお二人ですね。」
という記述が、下記のサイトにありました。
「Kindle、Kindleアプリで提供する文学全集、文学作品のサポートブログ」
という副題がつけられています。なお、「パブリックドメイン」については、ウィキペディアに「パブリックドメイン (public domain) とは、著作物や発明などの知的創作物について、知的財産権が発生していない状態又は消滅した状態のことをいう。」と記されています。

谷崎潤一郎の小説が、また『陰翳礼讃』が、『文章讀本』が、電子書籍で、0円で読める時代の到来です。電子書籍版の「谷崎潤一郎全集」がお目見えする日も近いことと思われます。


興味はあちこちへと飛び火し、「KDP」る語を検索すると、「KDP」とは「Kindle ダイレクト・パブリッシング」の頭文字で、AmazonのKindleストアで本を出版し、販売するためのサービスであり、セルフ・パブリッシングの代名詞的なサービスであることがわかりました。手数料無料、ロイヤリティ最大70% という謳い文句にもまして、自らの本をいとも簡単に出版できるようになったことに目を見張りました。求めれば誰もが表現する場を見つけることのできる今の時代はすてきです。


「何を今ごろ」と笑われるのかもしれませんが、昨日は新鮮な驚きに満ちていました。環境の整備は、今こうしている間にも着々と進められています。活用するのもしないのも、私たちいかんですよね。以上、「書籍三題」でした。