「近ごろ仏様のことが気になります」

 近ごろ仏様のことが気になります。
 下記の小林秀雄の「宗教と罪悪意識」についての発言が、とても印象に残っています。

学生 D 深い信仰であれば当然、深い罪悪意識が裏には伴うはずだと。ところが、宣長にはそういうものがなかったと、おっしゃるんですが。
小 林 僕はそういうふうに考えません。なぜ宗教を罪悪意識が伴うものであると考えるのでしょうか。宗教というものを、僕は大変広く考えています。
(中略)
罪悪感なんか一つもなくても、非常に深い信仰が可能ですよ。だから、宣長さんに罪悪感がなかったから彼の宗教は不徹底であったなんて、まったくの俗論だと僕は思う。人間を知らない人が言うことです。まあ、これは僕の考えだからな。僕はそういうふうには宗教を考えていないんだ。
小林秀雄『学生との対話』国民文化研究会・新潮社編(69頁,70-71頁) 

 『学生との対話』は、小林秀雄の「話しことばを、文字という形で言語″化」したものです。「ことば」を「言語」として書き留めたために、多くの情報が抜け落ちてしまいました。また、『学生との対話』は、講義の逐語記録ではなく、編集されていますので、なおさらのことです。小林秀雄の「ことば」にぜひ触れてみてください。
 下記の「音声ファイル」を添付しました。小林秀雄の講演を評する際には、よく古今亭志ん生の落語が引き合いに出されます。それほどまでに愉快です。名人芸です。
小林秀雄「学問をする面白さは女遊びどころじゃない」(iCloud Drive 音声ファイル)