「うちの店では、すべて純国産の『東海製蝋 』さんの蝋燭だけを置いています」 と、「田辺佛具店」さんに、燭台を求めにお邪魔した際にお聞きした。一年あまり前のことだった。蝋燭といえば「カメヤマローソク」とばかり思っていた私には意外だった。 その後、しばらくの間,「東海製蝋」さんの蝋燭と戯れた。 「月あかり」は、美しい。 「専門店向け。当社の最高級ブランドです」 「品質は高融点、高純度の原料を使った最高品。衣裳(意匠?)は伝統的な風合いと彩りを基調に、あくまで純和風に仕上げました」 「高融点」とは燃焼温度が高く、「高純度」とは、炎は蝋本来の輝きを放つということであろう。 私の手元には、小さな細身の「月あかり十分」しかないが、純白で硬質で、他の蝋燭 との違いは明らかである。炎は細身の蝋燭 と調和し気品があり、直立し揺らぐことなく鎮まっている。また、その透明感のある灯りは上品である。 「 月あかり」の名にふさわしい逸品である。 今回 はじめて 、蝋燭の “灯し比べ”をした。 「月あかり」,「雪だるま」,「華むらさき」,「星のしずく」,「キューブ・テン」, 名は体を表す。蝋燭職人の方たちの想いが名前に反映されていることを知らされた。 父の買い置きの蝋燭と線香がある。「月あかり」を知ったいま、始末屋の私としては、始末するほかない。また、微煙・微香の線香は線香とはいえず、こちらも始末し、たとえば、東大寺参詣時に、興福寺、唐招提寺、室生寺参詣時に求めた線香を焚こうと思っている。 仏壇に供える日用品だからこそ、大切にしたいと思う。 断片が続きます。