TWEET「金木犀」

 今回の自宅の解体工事では、庭もすべてつぶし、更地にする予定でいる。
 昨日の午後、玄関を出ると、金木犀の匂いが漂っていた。
 今秋が最後である。
 金木犀は知ってか、知らぬか、いつになく意気盛んであった。そうと知ってか、知らぬか、「死花」を咲かせているのかもしれない。

「糸に学ぶ―田島隆夫」
白洲正子『日本のたくみ』新潮文庫
「結城の在に名人のお婆さんがいて、死ぬ前に寝床の中でひいた」という「死花」(202頁)
のことを思いつつ、しばらくの間、金木犀の香りに包まれていた。



 あちこちから金木犀の匂いがする。金木犀の花期である。いままで、そんなことさえ思わずにいた。

 札幌では、地植えの金木犀は枯れてしまったという、また家内に置いた金木犀も葉が落ち、数輪の花をつけたのみ、とのことである。
 弟の金木犀への郷愁は意外だった。
 また、床の間にある、飾り棚の “竹”が欲しい、という。こちらも意表を衝かれた格好である。

「飾り棚の竹」

 人の数だけ思い出の品があり、郷愁がある。
 解体工事は、11月の上旬に決まった。


追伸:竹には巧みな細工がしてあった。
「ふた節(白い部分)が天井の内にあり、先端には針金が巻きつけてある」
「もぬけの殻(天井部)」
「飾り棚」
「穴の中には釘の先が見える」
「飾り棚をはさんだ継ぎ目。2本の竹から成っていた」
「殺伐としています」

 もちろん解体工事はこれしきのことでは済まず、残酷である。
 断章が続きます。