「学校教育の場での『読む』ことの訓練について」

 多くの、文章を読めない子どもたちがいる。要因は、私情をはさまず、文脈にそって読まない、読めないことにある。ひとりよがりの読み方をすれば、似て非なる文章を自ずから創作することになる。答案を書く際にも、文章中の言葉を使って書くのが原則である。
 学校教育の場で「読む」訓練が十分になされているとはとても思えない。たくさんの子どもたちが、文章が読めないままにおろそかにされている。
 出口 汪(ひろし)氏の以下の文章は、なにも受験にかぎられたことではない。「読む」ことの難しさは心得ているつもりであるが、文章を順序立てて、論理的に読むことは、「読む」ことの基本であり、学校教育の場で教えられてしかるべきことである。「読める」ことと「読めない」ことの差異は大きい。子どもたちの今後を思ったとき、はかりしれないものを感じている。


◇国 語
◇出口 汪『システム中学国語 公立高校編』 水王舎
◇出口 汪『システム中学国語 論理入門編』 水王舎
◇出口 汪『システム中学国語 古文・漢文編』 水王舎

◇「実況中継本」といわれる参考書です。対話形式で話し言葉で書かれています。出口汪さんは受験現代国語の世界で大きな足跡を残されています。
◇「国語はセンス・感覚の教科」ではなく「論理の教科」である、と出口さんは書かれています。
◇以下、出口汪『New 出口現代文講義の実況中継 ③』語学春秋社(大学入試用の実況中継本です)よりの、引用です。
「論理とは、物事の筋道のことである。筆者は自分の主張を筋道を立てて説明する。読解とは、その筋道をありのまま理解することであり、それを無視して、自分勝手に読み、自分勝手に答えるから、本来論理の教科である現代文が一転してセンス・感覚の教科になるのだ。現代文ほど成績の上がりにくい教科はないというのがそれまでの常識だったが、それは論理の教科をこともあろうに正反対のセンス・感覚の教科に取り違えてしまったからに他ならない。
もう一度断言しておく。
現代文ほど成績の上がりやすい科目はない。そして、そこには一貫した方法があり、正しい方法で一定の訓練さえ積めば、誰でも高得点を取ることが可能である。」

◇ぜひ文章の論理的な読み方を身につけてください。日常生活においても論理的に思考することは大切です。出口汪さんのこのシリーズには他にも『論理完成編』『難関高校編』『漢字・語彙編』があります。

◇志望校へ合格するためだけの受験勉強ではさびしいですね。これを機に自分の中の知識の絶対量を増やし、それを日常へと敷衍していくような学習を心がけてください。国語の問題を解く際には、問題文を楽しみながら読んでください。それくらいのゆとりが欲しいものですね。問題文には著名な著者の、著名な著書の、その中でも選りすぐりの文章が引用されているのが一般的です。私は、未知の分野の未知の作家のすてきな文章に出会うとうれしくなります。出典をメモしておいて買って読むこともあります。せめて著者名だけでも覚えるように心がけてください。やがてはそれが教養になります。後々生きてきます。

◇読書案内
◇以下に紹介する石原千秋さんの二冊の参考書は、国語の高校入試問題を題材にした、中学生向けの 解説つきの 上質な「読み物」だと思っております。入試を意識せずに読んでみてください。「評論文」はかなり読みごたえがあります。
◇石原千秋『小説入門のための高校入試国語 (NHKブックス)』日本放送出版協会
◇石原千秋『評論入門のための高校入試国語 (NHKブックス)』日本放送出版協会