「四日遅れの芒種の夜の螢狩_野分前の乱舞を期して」

 小雨の降るなか、野分前の乱舞に期待を寄せて、昨夜 螢狩に行ってきました。水面(みなも)には絶えずさざ波が立ち、時折強風が吹き、螢は風裏に退避していました。
 気もふれんばかりの、無数の螢の明滅の最中に身を置くことを期待しての道行きでしたが、夢は、風狂は、はかなくついえました。愚かでした。

帰宅後 調べると、「螢がよく見られる条件」として、
◇風がなく、湿度の高い温かな日
◇雨が降っていないこと
◇月明かりがなく、曇っている日
◇夜8時〜9時頃(この時間帯に最も見られます)
の四項目が、あがっていました。すべてにおいて、該当していませんでした。

 野分前に螢は乱舞する、という私の思いつきは、空振りに終わりました。狂喜、粋狂は、またの機会におあずけです。
 岸辺から遠く離れることなく、いまにも消え入りそうな淡い光を放ちながら、行きつ戻りつする一匹の螢を見つめていました。調べると、「メスは1匹で、500~1000個ものクリーム色の卵を水辺の湿ったコケなどに、真夜中から夜が明けるまで光りながら上手に産みます」との記述がありました。
 やはり産卵中の螢でした。あの灯(ひ)は、お慶びの、祈りの、産みの苦しみの灯(あかり)だったのでしょうか。
 世代から世代へと命がひき継がれる舞台に目を凝らしていました。