中井久夫コレクション『「思春期を考える」ことについて』ちくま学芸文庫

「内容紹介」
中井久夫コレクション『「思春期を考える」ことについて』ちくま学芸文庫
「人生にとって始まりは重要であり、その後の行路に無視できない影響を及ぼす。精神科医として、患者の治療を通して時代を眺めてきた著者は「高度成長は終わったが、そのバランスシートはまだ書かれていない。しかし、その中に損失として自然破壊とともに、青春期あるいは児童期の破壊を記してほしいものである。われわれは大量の緑とともに大量の青春を失ったといえなくもない」と指摘している。思春期の難しさを丁寧に描き出した作品を中心に、豊かな視野と透徹した洞察を物語る「サラリーマン労働」「病跡学と時代精神」「サリヴァンの統合失調症論」などを収める」

「教育と精神衛生」
中井久夫コレクション『「思春期を考える」ことについて』ちくま学芸文庫
 遅読を心がけながら読んだのですが、平易な日本語で書かれていますので、どうしても先を急いでしまいます。じゅうぶんにゆっくり読んだ、という実感がありません。
 中井久夫コレクション『「思春期を考える」ことについて』ちくま学芸文庫 の「教育と精神衛生」について書かれた第一章を読みました。


「思春期における精神病および類似状態」
「思春期患者とその治療者」
「ある教育の帰結」
「精神科医からみた学校精神衛生」
「『思春期を考える』ことについて」
「学校精神衛生ーー世界精神衛生連盟会議、マニラ、一九八一年の報告」
「教育と精神衛生」

 身につまされながら読ませていただきました。教育という名の下に、何の反省もなく、至極当然のように行われていることが、いかに子どもたちを追い詰め、病の温床になっているかに思いをいたしたとき、いたたまれない気がいたします。
 中学生を対象とした少人数制の学習塾を営んでおります。私が描いている塾の姿と、子どもたちや多くの保護者の方々が求めている塾の姿との間には懸隔があります。
 子どもたちのこころに気くばりのできる塾、という初心はいつしかどこへやら、しだいに勉強に、受験へと子どもたちを駆り立てるようになってきている自分、加害者に組するようになっている自分を感じています。ときに二律は背反することはわきまえているつもりです。河合隼雄は、『こころの処方箋』新潮文庫 に、「ふたつよいことさてないものよ」と書かれています。また、「ふたつわるいこともさてないものよ」とも書かれています。これを機に、私のスタンスとして、「塾と精神衛生とのはざま」で、折り合いをつけるのにふさわしい地点を、初心に返って探ってみようと思っています。今一度子どもたちとの関わり合いを見つめ直そうと思っております。中井久夫先生は、こんな機会を私に与えてくださりました。
 日頃子どもたちと接する機会のある人、すべての人たちに読んでいただけたら、と思っております。きっと何かが変わると思っています。何かがはじまると感じています。それが私の希望です。

 中井久夫コレクション『「思春期を考える」ことについて』ちくま学芸文庫 の内容につきましては項を改めて書くことにいたします。