「『北の国から』_リアルを支えるもの」

「第7章 都会で競ってる知識なんてなんの役にも立たない」
倉本聰, 碓井広義『ドラマへの遺言』新潮新書

「廃屋でのロケは、外は寒いから自分の出番が終わるたびに建物の中で暖をとるんですが、(いしだ)あゆみちゃんだけは表に立ってるんですよ。他の役者が “入りなよ” って言っても、 “私は4キロの道のりを歩いてきたって設定だから体を凍らせます” と。邦さん(田中邦衛)たちがすごく驚いてね。それから(『北の国から』の撮影)現場の雰囲気がずいぶん変わりましたよ」
 いしだあゆみの取り組み方、まるで高倉健である。(135頁)

「真冬の富良野ロケも本当に寒かった。特にあの年の冬は連日マイナス二十何度で。カメラやライトのコネクション部分が凍っちゃう。自分たちはこういう寒さの中での暮らしを描いてるんだってことが次第に分かってきて、みんな本気にならざるを得なくなった。
 とはいえ、純や蛍は子供だったわけですよ。夜、蛍(中嶋朋子)を膝の上に乗っけて抱えてやると寒さもあってすぐ寝ちゃった。純(吉岡秀隆)なんかは “杉田(成道)死ね! 倉本死ね!”って台本の裏に書いてました。(笑い)」
(中略)
「リアルでしたね。今なら児童虐待もいいとこですよ(笑い)」(136-137頁)