TWEET「台風16号の北上によせて」


 全く不謹慎なお話で恐縮ですが、台風が近づくとドキドキします。ワクワクします。が、暴風雨圏内に入ることはごく稀で、その落差は大きく、ガッカリします。最接近したらしたで、ただおろおろするばかりで、荒れくるう暴風、窓に瓦に容赦なくたたきつける暴雨におののき、家は揺れ心もとなく、さりとてなすすべもなく、なりをひそめやり過ごすだけです。台風一過後に広がる青空の青を見上げ、恨めしくも茫然と立ちつくします。

 が、数年前から様相は一変し、今の私にとって台風は、ただただ怖いだけの存在になりました。ようやく私も人なみに、大人になったようです。

 「地震雷火事親父」、火事はことさら取りあげていうまでもなく、自然は美しい姿を見せてくれる反面、ときには脅威にもなります。その両者を受け容れることができれば不足はないのですが、悠長に構えているわけにはいきません。

 父は昨日八十三歳の誕生日を迎えました。若き日の「親父」は、私とよく衝突し、感情のおもむくままに怒鳴りちらし、怖くもありやりきれなくもある存在でしたが、三年前に転倒して以来、デイケアとヘルパーさんのお世話になり、介助なしには外出できない状態になりました。父の老いていく過程を目のあたりにするのは辛く、哀しいことです。人の老いの非情さを私の目の前で繰り広げる今の「親父」は、私にとってはいつになく怖い存在です。