「映画『優駿 ORACION』、そして祈りについて」
同郷の杉田成道さんが監督をされ、1988年に公開された映画 『優駿 ORACION』の中で、緒形拳さんが演じる渡海千造が歌った、童謡「おうま」。
おうまの おやこは
なかよし こよし
いつでも いっしょに
ポックリ ポックリ あるく
おうまの かあさん
やさしい かあさん
こうまを みながら
ポックリ ポックリ あるく
強く印象に残っているシーンです。緒形拳の歌う哀調を帯びた「おうま」は、童謡の域を超えたものでした。息苦しいまでに切なく哀しく聴こえました。
「ORACION」、オラシオンとはスペイン語で「祈り」を意味します。
大江健三郎は、昭和六十二年十月二日に東京女子大学で「信仰を持たない者の祈り」と題する講演を行っています。私も信仰を持つ者ではありませんが、祈りはあります。かまびすしい祈りはやりきれません。祈りは静かであってほしいと思っています。そっと手を合わす姿は美しく、祈りには祈りで応えるしかありません。
「ORACION」、すてきな名前です。