長谷川和夫,猪熊律子『ボクはやっと認知症のことがわかった / 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言』KADOKAWA

◆ 長谷川和夫,猪熊律子『ボクはやっと認知症のことがわかった / 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言』KADOKAWA

 「この本は、これまで何百人、何千人もの患者さんを診てきた専門医であるボクが、また、『痴呆』から『認知症』への呼称変更に関する国の検討委員も務めたボクが、実際に認知症になって、いま、何を思い、どう感じているか、当事者となってわかったことをお伝えしたいと思ってつくりました。
(中略)
 ボクは何だか、自分が認知症になってから、症状が進行している自分をもう一人の自分が見ているような気がするのです。こんなふうにいうと『おかしい』と思われるかもしれませんが、ほんとうです。『そこがほかの当事者と違うところ」『専門医ならでは』といってくださる方もいます。そんなボクが思っていること、生きていくうえで大切だと考えていることを語ってみたい、聴いていただきたい」(6-7頁)

 「そういえば昔、聖マリアンナ医科大学(以下、聖マリアンナ医大)に勤めていたときに先輩から、「あなた自身が同じ病気にならないかぎり、あなたの研究は本物じゃない、認めない」といわれたことがありました。その先輩に向かって、いまなら「ボクも本物になりました」といえますね。(29頁)
「危険因子は加齢」
 「認知症になる危険因子として最も大きなものが、年をとることです。年齢が上がるにつれて、認知症の有病率がぐんと高くなります。七十代前半では三%台だったのが、八十代後半になると四0%を超え、九十代以上では六0%を超えます」(60-61頁)

 認知症は、決して他人事(ひとごと)ではなく、自身の問題です。もし家族の誰かが認知症になれば、やはり、他人事では済まされません。
 わずか数日の読書です。拾い読みでも、立ち読みでも構いません。実際に読まないまでも、せめて心に留めておいていただきたいと思っております。
 人の尊厳に関わる問題です。

 長谷川先生は、ご自身のことを「ボク」と表記されている。謙虚でひかえ目で優しく聞こえる。
 なお、長谷川先生は、「認知症の診断の物差しとなる認知機能検査」である「長谷川式簡易知能評価スケール(長谷川式スケール)」の開発者である。世界ではじめての試みであった。現在は、改訂版「長谷川式スケール」に受け継がれている。
 刊行当初から、気になっていた本である。

次は、
◆ 長谷川和夫,猪熊律子『ボクはやっと認知症のことがわかった / 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言』KADOKAWA
にみられた、長谷川先生が読まれた、
◆ 瀬戸内寂聴,池上彰『95歳まで生きるのは幸せですか?』PHP新書
です。Amazon より、そろそろ届けられてもいい時間帯なのですが…。
 瀬戸内寂聴さんは、2021/11/09 にお亡くなりになられました。享年99歳でした。ご冥福をお祈りしております。