「瀬戸内寂聴『お骨、仏壇、お墓』について語る」

「お骨はどうしたらいい? 仏壇は? お墓は?」
瀬戸内寂聴,池上彰『95歳まで生きるのは幸せですか?』PHP新書
「そもそもお釈迦さまは死後の世界や霊魂について何も語りませんでした。ですから、もともとの仏教の教えには、葬式やお墓の決まりなどはありません。今でもそうですが、インドにはお墓をつくるという習慣もないのです。
 だからといって今の日本の習慣を否定する気はありません。江戸時代以降、長きにわたって培われてきたのです。多くの人たちが思いを込め、共感を寄せてきたのですから、もちろん重い意味はあるのです。ただ、古いしきたりが、残された人たちにとって、あまりに負担に感じたり、受け入れがたいものであれば、縛られる必要はないと思います。
 お墓も仏壇も、あなたの好きにすればいいのです。そこに亡くなった人を偲ぶ気持ちが込められていれば、したいようにすればいい。私は常々そうアドバイスしています。
 少しルールを変えたぐらいで「たたりがある」などと言う人がいたら、それこそ仏教に反しています。お釈迦さまは、呪いやたたりといった超自然的な力は否定されました。証拠がないことをいいことに、恐怖で人の心を操るなんて、仏の道につかえる者のすることとは思えません」(67頁)

 死後のお祀りごとについては、以上でじゅうぶんであろう。やはり、寂聴さんという後ろ盾があることは心強い。