「昨夜 ひとり螢狩りです_その二」

 雲に隠れてピンボケの月が南の空にあった。
 堤を下る際に足を滑らせて転んだ。怪我はなかったが、手に持っていた「セブンカフェ」の 2/3 を失った。
 螢の明滅は、山の湧水が池に流れこむ所、流れ込み付近に集中していた。

 接近戦を試みた。螢の放つ光は、遠目には白色光、近づくと蛍光色、間近に見ると薄緑色をしていた。いずれも透き通った光である。
 水が張られた田んぼからは、蛙の合唱が絶えなかった。「春」を迎えた蛙たちの「蛙戦(かえるいくさ)」である。懸命な「蛙合戦」である。
 九時を境に明滅が止んだ。
 いまだ盛会とはいえず、気が逸る螢たちのはかない恋の夢路か、といった印象を受けた。
 次回は、週末に出かけようと思っている。今季の見納めか、と思っている。たとえ足を取られて転んでも、「セブンカフェ」だけは死守するつもりである。